ダイナベクターカートリッジの伝統
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ダイナベクターは1978年の創業以来、高級オーディオメーカーとして数多くの高性能カートリッジを世界に送り出して来ました。
開発にあたっては創業者 (※1)の築いた伝統「学術的工学理論に基づいたアプローチ」を常に心がけています。
極細線高出力コイルや宝石カンチレバーなど独自開発の高性能振動系に始まり、1990年代からは磁気回路の重要性に着目し、磁束(Flux)を安定させるフラックス・ダンパー(※2)、磁石の磁束変動を低減させるソフト・マグネティズム(※3)を開発しカートリッジに採用してきました。
そして2024年、新たに磁気回路の物性を理想的な性能に高め、飛躍的な音質向上に成功しました。
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※1 創業者・富成襄(1927~2002)、東京大学工学博士、東京都立大学機械工学科元教授
※2 FLUX DAMPER:カンチレバー・コイルの振動発電により生じる磁束(Flux)の乱れを閉鎖コイルをフロントヨークに巻付ける事で磁束ダンパーとして打消し磁束を安定させ、より自然な音を出力する。(特許取得)
※3 SOFTENED MAGNETISM:ネオジム等の高出力磁石は内部磁気抵抗が極めて高いため磁束密度変動が大きく音質の劣化を生みやすい。磁石に高透磁性体を付属させ磁力は維持したまま磁気回路の磁気抵抗を低減せしめ磁束 変動を防ぎ音質を向上させる。(特許取得)
新開発・特殊焼鈍磁気回路
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高性能MCカートリッジには優れた振動系が必要なのは言うまでもありません。
カンチレバー、コイル、ダンパー、高剛性ボディなど各要素に優れた性能が要求されますが、カートリッジを構成する磁気回路も極めて重要な要素であります。
カートリッジの出力信号は磁気回路の中で振動系が動くことにより発生します。磁石の生む磁束の中でコイルが振動し発電しているのです。磁束は高密度でなおかつ安定した状態でなければ良好な出力は得られません。
当社カートリッジの磁気回路には純鉄を採用しています。純鉄は透磁性が高く磁束を高密度で維持しますが、特にその安定性が優れており歪みの無い出力を得るには最適な材料と言えます。
しかしパーツとして加工成形される際、塑性変形により原子レベルで結晶構造が歪められ透磁性が大きく損なわれてしまいます。歪んでしまった結晶構造を再生するには焼鈍(しょうどん Annealing)いわゆる焼きなましが行われます。
加工成形されたパーツを加熱冷却することで透磁性を回復させる工程を磁気焼鈍と言いますが、汎用的な磁気焼鈍では結晶構造の歪みは完全には除去出来ず透磁性も完全には回復しません。
パーツの材質や大きさ形状等により磁気焼鈍の条件は細かく異なるのです。新型カートリッジの開発にあたり、焼鈍温度、焼鈍環境、加熱時間、加熱率、冷却率など磁気焼鈍の最適化にこだわり、純鉄ならではの優れた磁気性能を引き出すことに成功しました。
新しい理想的な磁気回路により、歪の無い優れた解像力、のびやかな広域の表現、音場空間の広がり、音質の全てが飛躍的に向上しました。
優れた振動系と理想的な磁気回路が生み出すハーモニー。
今まで以上に自然で躍動的なダイナベクターXX-2Aカートリッジの音をお楽しみ下さい。磁気焼鈍の効果(イメージ図)
加工過程で歪められた結晶構造が焼鈍により再生され透磁性が回復する。
MCカートリッジXX-2Aの特徴/構造/仕様
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アルニコマグネットを使用した磁気回路設計
マグネットには磁気抵抗の低い高価なアルニコマグネットを使用。
現在の主流であるサマリウムコバルト磁石やネオジムボロン磁石等の高エネルギー希士類磁石に比べて磁気抵抗が極めて低いアルニコ磁石は、レコード再生時の磁力の揺らぎが少ないため、S/Nが高く立ち上がりの良い音が特徴です。
フロントヨークに巻かれた巻線コイルはエアギャップ内の磁束(Flux)を安定させるための特許取得技術フラックス・ダンパーで、上位モデルと同等の構造を採用しています。
詳しくは、下記サイトのオーディオ技術レポートをご参照ください。
●オーディオ技術レポート:
フラックス・ダンパーとソフト化マグネット高剛性の磁気回路
フロントヨークとリアヨークは磁石と共にステンレスボルトで固定し、高剛性の磁気回路構成としています。
組み立ては熟練技術者による完全手造りで、音質に大きく影響する締め付けトルクの調整など、一品一品の綿密なる組立て工程により生産されています。 -
低出力タイプMCカートリッジ
0.28mVの出力電圧はMCカートリッジとして標準的なレベルで、昇圧トランスSUP-200以外にも一般のヘッドアンプや昇圧トランスに適合します。
推奨負荷インピーダンスは30Ω以上で、47kΩ(フォノイコライザー入力)をはじめとした様々な負荷設定に対応可能です。コンプライアンス
コンプライアンス10mm/N、重量8.9gのXX-2Aは一般的なトーンアームの相性も良く、軽質量から中質量までのほとんどのトーンアームにマッチングします。(ヘッドシェルはあまり重くない物を推奨します)
●オーディオ技術レポート:
カートリッジとトーンアームのマッチングについてソリッドボロン・カンチレバー
6mm長の0.3φソリッドボロンカンチレバーにPathFinder(PF)ラインコンタクト針を装着。 軽量且つリジッドな振動系を構成しています。
仕 様- 型 式
- 低出力MCカートリッジ(フラックスダンパー&アルニコマグネット採用)
- 出力電圧
- 0.28mV(at 1KHz, 5cm / sec.)
- チャンネルセパレーション
- 30dB 以上(at 1KHz)
- チャンネルバランス
- 1.0dB 以下(at 1KHz)
- 周波数特性
- 20 - 20,000Hz(±1dB)
- コンプライアンス
- 10mm/N
- 針 圧
- 1.8 - 2.2g
- インピーダンス
- R=6Ω
- 推奨負荷抵抗
- 30ohms以上
- カンチレバー
- 6mm 長 0.3φソリッドボロンカンチレバー
- スタイラスチップ
- 0.14×0.08mm PFラインコンタクト針
- 自 重
- 8.9g
Download- 取扱説明書
- xx2a_jmanual.pdf (782KB)
- 製品カタログ
- xx2a_jcatalog.pdf (4110KB)
製品レビューXX-2A MCカートリッジレビュー by Chris Frankland
XX-2Aの音質を評価するため、Pro-Ject Evo Premium(トーンアーム)とX8(ターンテーブル)に取り付け、Avid Accent(プリメインアンプ)とRussell K Red120 Se(スピーカー)の組み合わせで試聴しました。
私はまず、Avidのフォノステージを調整してシステムに最適な負荷インピーダンスを探すことから始めました。最初に代理店が推奨する100Ωから試しましたが、音質は良好だったものの、ボーカルが少し後ろに下がって聞こえるように感じました。一方、30Ωの負荷に設定した場合はピアノの音がより開放的でダイナミックに感じ、ドラムやシンバルもシャープでパンチが効いており、ベースギターのラインはよりメロディアスに聞こえました。全体としては微妙な違いでしたが、私は最終的に30Ωの設定を選びました。最適な負荷インピーダンスは、システムやフォノステージ、トランスにより結果が異なる可能性があるため、実際に自分で試してみることをお勧めします。
私は昔からLinda Ronstadtのファンで、彼女のアルバムの中で一番好きなのは「Hasten Down the Wind」です。70年代の録音の多くは多少物足りなさを感じますが、このアルバムは素晴らしい出来です。「Lo Siento Mi Vida」では、XX-2Aは彼女の素晴らしいボーカルの感情、音域、官能性を見事に再現しました。彼女の声には息を呑むような力強さがあり、彼女が力強く歌う時にもその迫力に決して負けることはありませんでした。イントロのギターもきちんと分離しており、バックボーカルも同様に鮮明に表現されていました。ベースラインは引き締まっており、重みがあってしっかりと動きが感じられます。また、ミックスにより埋もれやすいペダルスティールギターの音も失うことなく再生し、しっかりと存在感を示していました。
ダイナベクターのXX-2Aは、ZZ TopからMiles Davisまで、私が試聴したすべての音楽で素晴らしいパフォーマンスを発揮しました。その音は分解能が高くダイナミックで魅力的であり、ミュージシャンがどのように演奏しているかまでハッキリと再現してくれるため、音楽に引き込まれます。ボーカルは自然で色づけがなく伸びやかで、感情豊かかつワイドレンジです。全体的に、XX-2Aの音はテンポが良く、メロディアスで、音楽のリズムの流れをしっかりと捉えられる軽快さがあります。足をリズムに合わせて自然に動かしてしまう感じです。XX-2Aは非常にコストパフォーマンスに優れた製品であり、この価格帯のカートリッジを探している方には、私は熱烈にお勧めします。
上記レビューは一部を抜粋したものです。詳しくはレビュー全文をご参照ください。
●XX-2A MCカートリッジレビュー by Chris Frankland -