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Special Annealing

特殊焼鈍磁気回路

高性能MCカートリッジには優れた振動系が必要なのは言うまでもありません。
カンチレバー、コイル、ダンパー、高剛性ボディなど各要素に優れた性能が要求されますが、カートリッジを構成する磁気回路も極めて重要な要素であります。
カートリッジの出力信号は磁気回路の中で振動系が動くことにより発生します。磁石の生む磁束の中でコイルが振動し発電しているのです。

磁束は高密度でなおかつ安定した状態でなければ良好な出力は得られません。
当社カートリッジの磁気回路には純鉄を採用しています。純鉄は透磁性が高く磁束を高密度で維持しますが、特にその安定性が優れており歪みの無い出力を得るには最適な材料と言えます。
しかしパーツとして加工成形される際、塑性変形により原子レベルで結晶構造が歪められ透磁性が大きく損なわれてしまいます。

熱処理炉 歪んでしまった結晶構造を再生するには焼鈍(しょうどん Annealing)いわゆる焼きなましが行われます。
加工成形されたパーツを加熱冷却することで透磁性を回復させる工程を磁気焼鈍と言いますが、汎用的な磁気焼鈍では結晶構造の歪みは完全には除去出来ず透磁性も完全には回復しません。
パーツの材質や大きさ形状等により磁気焼鈍の条件は細かく異なるのです。

ダイナベクターの特殊焼鈍磁気回路では、カートリッジの磁気ヨークとして最適な特性が得られるように、焼鈍温度、焼鈍環境、加熱時間、加熱率、冷却率など磁気焼鈍の最適化にこだわり、純鉄ならではの優れた磁気性能を引き出すことに成功しました。
新しい理想的な磁気回路により、歪の無い優れた解像力、のびやかな広域の表現、音場空間の広がり、音質の全てが飛躍的に向上します。

磁気焼鈍の効果(イメージ図)

加工過程で歪められた結晶構造が焼鈍により再生され透磁性が回復する。

特殊焼鈍の効果(イメージ図)

焼鈍(Annealing)とは

磁気焼鈍(焼きなまし) 主に鉄などの金属に対して行う「焼き入れ」という熱処理については、知っている方も多いと思います。金属を特定の温度まで加熱した後で急冷する「焼き入れ」は、簡単に言えば金属を硬く強くするための工程です。包丁やハサミなどの刃物にも「焼き入れ」が効果的に使われています。
一方、「焼き入れ」と対になる熱処理である「焼鈍(しょうどん Annealing)」=「焼きなまし」については、あまり知られていません。
鉄などの金属を特定の温度まで加熱した後で徐冷(ゆっくりと冷却する事)する事により、「焼き入れ」とは反対に金属を柔らかくするのが「焼鈍」の目的です。

金属を柔らかく=弱くする事に何の意味が?と思いますが、そうではありません。硬い金属は摩耗や変形に強い一方で、欠けたり折れたりしやすい脆さも持っています。 ただ硬くすれば良いのではなく、硬さと柔軟性を兼ね揃えた強さを目指す。それは、古くは日本刀を打つ刀鍛冶にもつながる、伝統的かつ高度な技術を要する手法です。

磁気焼鈍(焼きなまし)のコントロール 「焼鈍(しょうどん Annealing)」=「焼きなまし」には、金属を柔らかくする以外にも重要な役割があります。 それは、金属材料の製造時や加工時にかかった力による歪みや内部応力を取り除き、金属本来の性能を取り戻す事。 適切な「焼鈍」により生まれ変わった金属は均質で、その材料が本来持っている特徴を最大限に発揮できるようになります。

「焼鈍」の中でも磁性材料の性能向上に特化した熱処理が「磁気焼鈍」です。 磁気回路の性能を決める要素である「保磁力」や「透磁率」を向上させるための磁気焼鈍は、それぞれの金属材料が持つ組成や特性に合わせて加熱温度や雰囲気(熱処理炉内を満たす気体)を適切に判断する必要があり、「焼鈍」の中でも特に専門性の高い熱処理です。
ダイナベクターでは、最新の特殊材料の開発にも携わる磁気焼鈍のスペシャリストと共に新たな磁気焼鈍技術の開発を行い、優れた磁性材料である純鉄の性能を向上させるための新たな特殊焼鈍を実現しています。


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