スーパーステレオから平本式スーパーステレオへの展開 |
次にスーパーステレオから平本式スーパーステレオへの展開へのプロセスについて説明する。 |
1. フロントスピーカーの選択 |
壁に掛けることを前提として小型スピーカーを選択の対象に考え、Monitor Audio、Ortofon、Air Jordan、QUAD、KEFなどの小型スピーカーを候補とした。その際、フルレンジの超小型スピーカーである、Bose、YAMAHA、富士通テンなどはイソフォンの10cmフルレンジの実験結果から対象とせず、可能な限りワイドレンジのものを対象とした。 しかし、壁掛けを前提としたものは超小型スピーカーを除けばMonitor AudioのRadius 90くらいしかなく、行きつまっていたところ、なにげなく覗いたダイナミックオーディオトレードセンターで、いくつかの小型スピーカーを壁掛けにして展示していることに気づき、LINNのCLASSIKがBoseのアタッチメントで壁掛け型にできることを知った。音色的にも既に設置しているヨーロッパ系のスピーカーにも合いそうだし、サイドスピーカーのStella Harmonyとパラに接続するので、能率がStella Harmonyと違いすぎないことも考慮した。 |
2.フロントスピーカーのセッティング |
ブロックダイアグラムについては既に報告した通りで、LINNのスピーカーはサイドのStella Harmonyとともに45ppアンプにパラに接続している。 なお、平本式ではサイドスピーカーのセッティングはリスナーに向けているが、まずはダイナベクターのスーパーステレオの推奨通り、メインやフロントスピーカーに向けてみた。フロントスピーカーのセッティングは次の3通りを試した。 Case1: Case2: Case3: |
3.種々のソースによる試聴 |
まず、比較的小さい演奏会場での室内楽では、通常は直接音が鮮明で、きつい音になりがちであるが、スーパーステレオから平本式スーパーステレオとするに従い、個々の楽器の音に柔らかさが出てきて、演奏会場全体の響きが豊かになってくる。例えば、メンデルススゾーンの弦楽八重奏やブランデングルグ協奏曲などでこのような効果をもたらす。 一方、ホールや教会など、エアーボリュームの大きな会場では、上記の効果は一層強まり、スーパーステレオから平本式スーパーステレオとするに従い、特にホルンなどの管楽器の響きやコントラバスのうなりのような低音が目立ってくる。 反面、ポップス系統では、ベースが出すぎたり、古いアナログ録音では、曖昧なぼけた音になることもあり、スーパーステレオから平本式スーパーステレオの順に、このような傾向が強まってくる。 |
4.鎌谷邸の平本式スーパーステレオとの相違点 |
鎌谷邸の平本式スーパーステレオは、何といってもメインスピーカーやその駆動アンプの質の良さである。ともかくインフィニティだけでもハイクォリティのプレイバックが楽しめるわけで、それにスーパーステレオの効果を加えていることで、個々の楽器のニュアンスの再現と音色の溶け合いに抜群のパーフォーマンスを示している。 これに対し、小生宅のアドバンテージは何かと言われれば、14畳というエアーボリュームの大きさとフロントを除く6台のスピーカー全部にムラタのセラミックツイーターなどの良質なスーパーツイーターを加え、リアやサイドにも比較的良質のブックシェルフ型スピーカーを配置していることの効果であり、これらがメインスピーカーの非力さを補って、倍音の豊かな古楽器のニュアンスとオペラ劇場や教会のドームのようなエアーボリュームの大きなライブ録音の会場の「空気感」をもたらしてくれることで、それなりの満足感がある。 また、鎌谷邸の平本式スーパーステレオでは、リア、サイド、フロントのいずれもが小口径のスピーカーを使用しており、低音は主として、メインのインフィニティから出てくるが、小生宅では、メインとリアが20cm、サイドが16cmと比較的低音が出やすく、これらの相互作用で、部屋中に響き渡る低音感が得られている。 |
5.平本式スーパーステレオの再調整 |
上記の試聴では、平本式スーパーステレオではサイドスピーカーのセッティングはリスナーに向けているが、ダイナベクターのスーパーステレオの推奨通り、メインやフロントスピーカーに向けていた。そこで、さらに以下の実験を行った。 (1)サイドのスピーカーをダイナベクター推奨の前向きからリスニングポイントに向ける。 (2)スーパーステレオの利かせ方の調整を平本邸のシステムを参考に再度調整し、スーパーステレオの強さを控えめにする。 (3) (1)項により低音が痩せてきたので、リアの強さを相対的に上げ、以前の実験では低音の出方が良かったリアの逆相接続を正相に戻す。(対面したサイドとリアの打消しを無くす。) 以上により、平本式スーパーステレオのように定位も良くなり、音像がくっきりとしてきた。そして大編成ものの弱音から総奏の吹き上がりまでのダイナミックレンジがとれるようになってきた。 |
6.平本式スーパーステレオの結論 |
オリジナルのスーパーステレオのセッティングのバリエーションとして平本式スーパーステレオがあるわけであるが、オリジナルのスーパーステレオに比べて、平本式はフロントのスピーカーが加わった分だけ、ステージ方向からの響きが豊かになってくる。なお、このフロントのスピーカーのセッティングはメインの後方で、かつ、上方向に置くのが、奥行きと会場の高さを感じさせる効果があるように思われる。 平本式スーパーステレオも小生宅のセッティングもフロントスピーカーはメインの内側に来ている。鎌谷邸のように、メインスピーカーの外側に持っていきたいところであるが、鉄筋コンクリートの柱があったりして、残念ながらそういったセッティングができない。 以上、全体を纏めると、2チャンネルに比べてスーパーステレオは相当に臨場感を加えるものであるが、平本式フロントスピーカーはオリジナルのスーパーステレオに対し、さらにステージ方向からの響きをプラスするので、スーパーステレオ効果をエンハンスするものと言えよう。また、フロント、サイド、リアのスピーカーを適切に選択し、ソースや録音条件に沿った細かい調整を行っていけば、さらに可能性が広がるものと考えている。 今回、採用した、TelefunkenとEMIのモニター、LINNとAcoustic Lab.のスピーカーはそれぞれ音色の類似性もあってか、一応は成功したものと思っている。すなわち、現状では、鎌谷邸ではハイエンドシステムをベースに澄んだ高貴な音、平本邸では正確な位相合わせの行き届いたホーンシステムをベースに精緻でスペキュタクラーな音であり、ともにホールの前列で聴いている雰囲気があるのに対し、小生宅では、音像がやや曖昧になり、楽器の音色の描き分けが一段劣るのはやむをえないとして、小型スピーカーとは思えない音場が14畳全体に広がる痛快さがあり、ホール後列で聴いている雰囲気がある。 以上の経過で、小型スピーカーの能力の範囲内で、居ずまいを正して聴く教会カンタータやミサ曲について一応の満足度が得られている。また、息抜きに聴く、50年代のカントリーやデキシーランド、60年代のアメリカンポップス、さらには霧島昇、田端義夫、小林旭などのアナログなども意外に新鮮な側面を聴かせてくれる。
越の聴楽酒仙坊 記 |
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