スーパーステレオ構築への道のり

  ここでは、スーパーステレオ構築へのアプローチの経過をまとめ、併せてダイナベクターのホームページで述べられているスーパーステレオの標準的な推奨方式についても言及する。

1. サイドとリアスピーカーの選択とスーパーステレオの効果

 ダイナベクターのホームページによれば、「サイドとリアスピーカーは小口径のフルレンジで良い。」とされており、ダイナベクターの試聴室でもバンドール製の小口径フルレンジが使用されている。実際、実験の結果、イソフォンの10cmフルレンジでも、スーパーステレオの効果は充分に認められたし、ダイナベクターの試聴室でも、ホールトーンは勿論のこと、驚くほど低音が豊かに響いていたので、スーパーステレオの効果を試すには、手っ取り早くはこの考えかたで良かろう。

  しかし、種々検討した結果、メインスピーカーと同程度のクォリティをサイドとリアにも確保し、周波数レンジを広げると、それに応じた効果が得られることもわかった。リアのスピーカーの口径を大きくしても、出すぎた低音は調整可能であった。また、サイドとリアのスピーカーに付加したムラタやTakeTのスーパーツイーターの効果も弦の艶やかさや、ライブ録音での会場のざわめきを的確に捉えられた点で、その効果が認められた。これらのスーパーツイーターもそれ自体、ホールの雰囲気を描き出す効果があるが、違うメカニズムでスーパーステレオと相乗的に働くのではなかろうか。但し、メインと同程度のクォリティをサイドとリアのスピーカーに確保し、レンジを広げることは当然のことながら、聴くソースによって、またリスナーが何を求めているかによって、その評価が変わってくるのは当然である。Jazzのように直接音を正面から浴びるような聴き方をするリスナーには無縁のものであろうと思われる。

2.サイドとリアスピーカーのセッティングとスーパーステレオの効果

 ダイナベクターのホームページによれば、「サイドとリアのスピーカーのセッティングはかなりラフでも良い」とされている。スーパーステレオの効果を試すには、手っ取り早くはこの考えかたで良かろう。実際、何も考えずにポンと適当に設置しただけで、驚くほどの効果が認められたからである。

  しかし、サイドとリアのスピーカーのセッティングを細かく詰めれば詰めるほど、ホールの雰囲気などは向上していく。しかも、前後、左右、高さなど、セッティングの位置は、部屋のサイズや反射特性やリスニング位置との関係で微調整する余地が結構大きい。ダイナベクターのホームページによれば、リアスピーカーの高さは、演奏会場の天井の高さを感じさせるため、しいてはエアーボリュームの大きさを感じさせるために高い位置を推奨しており、このことは再現できた。

3.ソースの違いによるスーパーステレオの効果

1)CD/DVD/SACD/LPのメディアによる違い
CD/DVD/SACD/LPの違いによるスーパーステレオの効果は、どのメディアで大きく、どのメディアで小さいとは一概に言えない。それより、どのような音楽なのか、どのような録音場所か、また録音コンセプトかによる効果の違いの方が顕著である。敢えて言うと、概して低音がきっちりと録音されているディジタル系のソースの方が、スーパーステレオによる低音増強効果が顕著なように感じる。

2)音楽による違い
どのような音楽でも効果はあるが、やはり、大きなホールあるいはスタジオや教会で録音されるクラシック系の方で効果が顕著に見られる。このことはホールトーンや残響時間の長い教会の雰囲気を出すのにスーパーステレオが向いているためであろう。
ポップスや歌謡曲では、うまくいくと劇場や映画館やクラブで演奏している雰囲気が出てくるが、妙にエコーをかけていたりすると、スーパーステレオがマイナスに働いて違和感を覚えることがある。

3)アコースティック楽器と電子楽器による違い
やはり、自然なアコースティック楽器の録音の方がスーパーステレオの効果が出る。電子楽器の演奏あるいは、打ち込みプログラムの演奏においてプロセッサーで弄っている場合は不自然になることがある。

4)録音場所による違い
大きなホールあるいは教会で録音したものの方が、小さい部屋で聞いても自然な残響音が付加され、満足感が得られることが多い。打ち込みのプログラム演奏の録音では、何が原音なのか、わからないので、スーパーステレオはかえって違和感を覚える。興味深いのは屋外で演奏しているライブ録音でもホールで演奏しているような雰囲気が出ることである。

5)録音の新旧による違い
基本的に録音の新旧というよりは、録音のコンセプトとテクニックがスーパーステレオの効果に影響している。最近、アナログ録音の復刻がSACDやCDで出されているが、こういったものはスーパーステレオで生きかえったようになることが多い。もともとの録音のコンセプトとテクニックがしっかりしているからであろう。

4.駆動アンプとスーパーステレオの効果

 ダイナベクターの試聴室、平本邸、鎌谷邸のアンプはいずれもソリッドステートであり、自宅ではビンテージものの真空管アンプである。双方共に違和感はなく、スーパーステレオの効果へのアンプの駆動方式の影響はないものと考えられる。但し、実際に確かめたわけではないが、多少音が硬いアンプでも、ホールトーンの付加により、柔らかさ、しなやかさが出てくるのではなかろうか。

5.SSP-5の調整

 一般的にクラシックではサイドとリアの効きを強くし、ポップスやJazzでは効きを弱めると、それらしく聞える。特に、クラシックでは歌劇場や教会でのライブ録音でサイドとリアの効きを強めにすると良い。また、ポップスや演歌でエコーがかかっているものは、サイドとリアの効きを強くすると屋上屋を重ねる感じで不自然になる。しかし、素直に録音された60年代のポップスでは、サイドとリアの効きを強めると楽しめる音になってくる。

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越の聴楽酒仙坊 記


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