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History of Moulton Bicycle

プロダクトデザイン ※ 記載されているモデルは当時のラインアップです。APBシリーズなどは、現在、新型のTSRシリーズに変わっておりますのでご了解願います。

プロダクトデザイン
私が自転車を設計する上で留意したことは、ノーマルな乗車姿勢を保ちながら、次の事柄を満足させることでした。すなわち、

・乗りやすいオープンなフレーム
・男女共用で年齢を問わない成人に適したサイズであること
・必要な荷物を積めること

全体の構造体として考えたことは、サスペンションのベースとして十分な強度を確保しつつ、その重量は軽くしなければならないということです。
モノコック構造、前傾した乗車姿勢、アルミニウム構造体等の採用を止めた場合のことを考慮すると、自転車設計ということを根本的に考え直し、更にはより徹底した研究の必要性があることに直面しました。結論として先進的な自転車に必要とされることは以下のことです。
  • 小径ホイールと高圧タイヤ
  • フルサスペンション
  • 可能な限り堅牢なフレーム
モールトン自転車の全体的なギア比は、適切なサイズのチェインホイールとスプロケット採用することにより一般大径ホイール自転車と同等のギア比を実現しています。

小口径ホイール

The Hall 小口径ホイール
The Hall 小口径ホイール
自転車の研究を始めた当初は、昔からの自転車の設計上当然とされていた、使い勝手が悪く、乗り降りし難い26、28インチ径ホイールに対する困難な問題を如何に解決するかで頭を悩ませました。

1960年初頭になると、フォートダンロップの研究の成果として、タイヤの「ころがり抵抗」はホイール径によって決まるのではなく、タイヤの内圧とその材質で決まるのだという基礎理論が明らかにされました。その結果、特別製の16、17インチ径高圧タイヤ採用のモールトン自転車が誕生したのです。

いろいろな条件を厳密に想定した状態で、250回を超えるダイナモメーターを使用した走行テストが繰り返された。テストの結果全てのスピードレンジにおいて、モールトン自転車は通常の自転車より、パワーロス、加速度性能においてその優位性を立証できた。

高圧タイヤは「ころがり抵抗」を少なくし、小径ホイールは「空気抵抗」を少なくする。すなわち少ない力でより速く走ることができる高圧タイヤと小径ホイールの採用は、最初からモールトン自転車の設計にとって欠くことのできないことでした。

モールトン博士が1973年に英国学会に発表した図表で、小径ホイールと高圧タイヤを採用したモールトン自転車が通常の自転車よりも、すべてのスピードレンジにおいて優れたパフォーマンスを得たことを示している。

ニューシリーズ・モールトンでは超高圧タイヤと20インチ径ホイールの採用により、より優れた パフォーマンスとハンドリングが得られています。

サスペンション機構

小径ホイールは剛性が高く、その上高圧タイヤを使用しているため、どうしても乗り心地がハードになり、モールトン自転車ではフルサスペンション装備が欠くこととできない特長の一つになっています。これによりモールトンは他の自転車に比べ、あらゆる面で卓越した快適性と路面接地性能(ロードホールディング)を兼ね備えています。

サスペンション機構は他の自転車にも採用されましたが、モールトン自転車のように快適性と路面接地性能を常に追求したものではなく、ジャンプしたときのショックを減らす「着地緩衝装置」として使用されることが一般的でした。

モールトン自転車のサスペンション機構は40年に亘り、ライダーの快適性とその効果がベストな状態になるよう改良されてきました。
サスペンション機構 FRONT
ニューシリーズ・モールトンのフロントサスペンションはアンチダイブ機構(沈み込みを防ぐ)を装備した「フレクシター®」という形式。4つの「フレクシター®」はゴムの「捩じれ」を利用したもので、摩擦と磨耗がなく路面からの突き上げも皆無です。この機構により路面からの振動は完全に絶縁され、「シルキーライド」すなわち絹のように滑かな乗り心地を実現しています。
サスペンション機構 BACK
ニューシリーズ・モールトンの特長の一つである、リアの「ハイドロラスティック®」サスペンションは、液体を封入したダンパーとゴムスプリングを併用しています。

フレーム

剛度、強度、重量といったその特性は主として構造物の形状によりますが、材質と言えば、数々の経験から蝋付けや溶接により結合されたスティールチューブが優れており、その長所を信じて疑いません。この方法で造られたモールトンのフレームは、例えそれが損傷した場合でも、容易に修理が可能で、耐久性の高さということについても長きに亘り証明されています。軽量で極めて堅固な強度を持つモールトン自転車のフレームは乗り手に対し新鮮で驚くほどのパフォーマンスを約束します。

高剛性スペースフレーム Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
高剛性スペースフレーム 他の乗り物も同じですが、自転車においてもフレーム強度は、そのパフォーマンスを決定する上での需要項目です。水平方向の頑固さは特に重要で、柔なフレームは乗り手のエネルギーを消耗させてしまいます。強固なフレームは正確に車輪を回転させることができ、確実なロードホールディングとコーナーリング安定性に寄与します。

ユニークな形をしたモールトン車のスペースフレームは、細径のパイプを高度な技術により格子状に組合わせ、通常のダイアモンドフレームに比べ、遥かに堅固な強度を持っています。

このフレームの基本設計概念は一通りのフレームサイズで、どのようなサイズの乗り手に対しても対応でき、オープンで且つ乗り易いということです。また男女兼用のステップ・スルー・デザインは事故の原因になり易い、ダイヤモンドフレームの危険なトップチューブを避けることができます。
分割可能フレーム Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
分割可能フレーム モールトン自転車はもともとコンパクトな上、フレームが分割できるので、他の乗り物に積み込み持ち運ぶことが容易です。

車の屋根や後部に自転車を固定して運ぶことは、傷が付き易いだけでなく、エネルギーの無駄使いで、通行人にとっても潜在的に危険であると思われます。

2分割に分解すれば、車のトランクや旅行鞄に容易に収納でき、街中や郊外で多目的なマシンとして使用できます。
分割可能フレーム
ウィシュボン・ハンドルバー・システム Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
ウィシュボン・ハンドルバー・システム ワンタッチ操作で調整でき、十分な調整範囲も持った新設計のウィシュボン・ハンドルバー・システムは、レースやツーリング、あるいはレクリエーション用としても最適なライディングポジションが得られます。
キャリア・バッグ Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
キャリア・バッグ モールトン自転車は荷台が広く、特別にデザインされたモールトン・バッグを使用することにより、実用的な都会ユースの小型自転車が大陸横断旅行の過酷さにも耐えられるような自転車に変身します。

高耐久性構造

モールトン自転車はその構造がユニークなため、ゴムのサスペンションや特別サイズのタイヤ用鋳型など、特別な部品が要求され、それを自社生産するために、特別の治具や設備が必要になります。フレームとフォークは高度なスキルを持った小人数の熟練工により銀ロウ付けされており、各コンポ-ネント仕様は流行ではなく、その品質と機能で選定しました。

耐久性と堅牢さ Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
耐久性と堅牢さ モールトン・フレームは数多くのモールトン車を使用しての、50,000マイルを越す実走行結果から最終的に決定されました。このモールトン・フレームは疲労を軽減するサスペンションの採用と共に、熟練工の高度な技量が長い年月の間モールトン自転車の持つパフォーマンスと価値を保証しています。
トランスミッション Dr Alex Moulton C.B.E., M.A.(Cantab), FEng., R.D.I.
トランスミッション ニューシリーズ・モールトンでは異例の3:1のレンジを持つ、モールトン開発の9段変速クロスレシオクラスタを採用し、異なるチェインホイールサイズに対してのオプションも用意されています。